結論から言うと、SEOで結果が出るかどうかを分けているのは、記事のうまさでも予算でもなく「やめないかどうか」です。そして多くの会社は、意志が弱くてやめるのではありません。最初に「立派に始めよう」としすぎて、続けられない設計のまま走り出してしまうから止まります。
マーケ担当がいない中小企業ほど、この落とし穴にはまります。誰も専任で見ていないので、まず体制と方針をきちんと固めてから、と考える。その準備がいつまでも終わらない。あるいは気合いを入れて始めた結果、三ヶ月で現場が疲れて更新が止まる。この記事では、なぜ最小構成で始めるのが最も合理的なのか、そしてSEOで最後に効いてくるのが「やめないこと」である理由を、僕自身の大失敗も含めてお話しします。
※すでに記事の更新が止まっている、という状態からのご相談でも大丈夫です。
なぜ「準備が整ってから始める」とSEOは始まらないのか?
準備が整う日が来ないからです。そして準備の量は、成果を1ミリも保証しないからです。
これは僕自身が、いちばん高い授業料を払って学んだことです。15年ほど前、僕は小学生向けの通信教育サービスを立ち上げました。毎月ひとつの都道府県を取り上げて、その土地の特産品や読み物を家庭に届けるという企画です。両親が高校教師で、家では「教育とは何か」がいつも話題になる家庭で育ちました。偏差値ばかりを見る社会への反発もあって、小学生の時期こそ教養を育てるべきだ、という自分なりの信念がありました。
その信念のまま、僕はひたすら作り込みました。キャラクターを開発し、読み物を制作し、印刷まで手配して、300〜400万円を投じました。一方で、保護者に意見を聞いたことは一度もありませんでした。自分の子どもにすら教材を読ませていませんでした。完成間際になって「やっぱり違うかもしれない」と自分の気分で方針を変え、リリースを延期したこともあります。ユーザーの声で変えたのではありません。自分の中の理想像に合わないから変えたのです。
結果は、1個も売れずに撤退でした。
会社を畳んだとき、正直に言うと悔しさよりも「ホッとした」という気持ちの方が強かったです。何が構造的にまずかったのか自分でも分かっていませんでしたし、預金は減り続け、打つ手がありませんでした。悔しさが遅れてやってきたのは、その後まったく別の土地で事業を立ち上げ、少しずつ自信を取り戻した頃です。「くっそ、こういうことだったのか。なんであの時に気づかなかったんだろう」と、何年も経ってから胸が痛くなりました。
今なら分かります。あのとき僕に足りなかったのは、準備の量ではありませんでした。世に出して反応を見た回数です。
SEOもまったく同じ構造をしています。体制を整え、方針を決め、記事の型を作り込んでからようやく1本目を出す。その1本目が読者に刺さっているかどうかは、出してみるまで誰にも分かりません。準備に半年かけた会社と、粗くても半年動かした会社では、手元に残っている情報量が違います。前者に残るのは立派な計画書だけです。
SEO対策をやめてしまう会社は、どこで止まっているのか?
多くの会社は「効果が見えない期間」を越えられずに止まっています。しかもその大半は、始めてすぐの時期です。
全研本社が2022年にオウンドメディア運用経験者300人に行った調査では、運営停止中のオウンドメディアのうち65.5%が、開始から半年以内に更新を止めていました。停止理由の1位は「運営担当者がいなくなった・運用の手が足りなくなった」で54.3%を占めています(出典:PR TIMES/全研本社株式会社)。
この数字を見たとき、僕は「やっぱりそうか」と思いました。やめた理由の1位は、成果が出なかったことではないのです。手が足りなくなったこと、つまり続けられない量を最初に背負ってしまったことです。
マーケ担当のいない会社では、記事を書くのはたいてい現場を持っている人です。営業の合間、製造の合間、現場から戻った夜に書く。その状態で「週に2本」と決めてしまえば、最初の1ヶ月は根性でもちます。2ヶ月目から遅れ始めます。3ヶ月目には「今月は落ち着いてからまとめて」になり、そのまま止まります。
そして、ここが残酷なところなのですが、SEOの成果が見え始めるのは、たいていその後です。半年で止まるということは、成果が出るかどうかを確かめる手前で降りているということになります。何度も繰り返しますが、これは担当者の根性の問題ではありません。最初のペース設計の問題です。
| 半年で止まる始め方 | 続く始め方 | |
|---|---|---|
| ペース | 理想の本数から逆算する | 一番忙しい月でも回る本数から決める |
| テーマ | 検索されそうな順に並べる | 自分たちが一番詳しく語れる順に並べる |
| 記事の作り | 完璧な形が固まるまで出さない | 必要な要素だけ揃えて出し、後から直す |
| 判断のタイミング | 成果が見えないと感じた時点 | 見えない期間があると織り込んでから始める |
見比べると、右側は妥協しているように見えるかもしれません。でも実際には、右側の方が最後まで走り切ります。そして走り切った会社にだけ、記事は資産として残ります。
なぜ「最小構成で始める」ことが、いちばん合理的なのか?
最小構成は手抜きではなく、続けるための設計だからです。
やることは大きく三つです。一つ目は、一番忙しい月でも回るペースを先に決めること。二つ目は、自分たちが一番詳しく語れるテーマから書き始めること。三つ目は、記事として機能する最低限の要素だけを揃えて世に出すこと。それぞれ具体的な決め方はマーケスクールで手順として解説していますが、ここでは「なぜそうするのか」をお伝えします。
とくに二つ目の「詳しく語れるテーマから始める」には、はっきりした理由があります。自分が実際に経験したこと、試したこと、失敗したことがある領域なら、AIには絶対に出せない具体性が自然に入るからです。しかもネタ切れしません。調べながら書く記事は1本に何時間もかかりますが、自分がやってきたことなら書ける。続けられる、というのはそういうことです。
僕が「これは自分たちにしか書けない」という感覚を初めて掴んだのは、前職で商業施設の運営に関わっていた頃です。コワーキングスペースのブログ更新という、いわば作業として振られた仕事でした。何を書いてもよかったのですが、逆に言えば何を書いても事業に繋がらない状態でした。
そこで、自分から提案して中身を変えました。施設で開いたイベントのレポート記事、入居している企業の経営者へのインタビュー記事。検索から見つけてもらいやすい記事の組み立ても自分で考えました。特別なことをしたわけではありません。ただ、その場所にいる自分たちにしか書けない材料が、目の前にいくらでも転がっていることに気づいただけです。他所から借りてきた情報を並べていた頃と比べて、書くのが苦しくなくなりました。
御社にも、同じ材料が必ずあります。お客様から毎週のように聞かれる質問、現場でしか分からない失敗、同業者なら誰でも知っているけれどお客様は誰も知らないこと。それを書けばいいのであって、業界の網羅的な解説記事から始める必要はまったくありません。
社内に材料はあるのに手が回らない、という段階でしたら、材料を引き出すところから一緒に取り組むこともできます。
成果が見えない期間を、どう乗り越えればいいのか?
「まだ成果が出ていない」と「うまくいっていない」を、分けて見ることです。
SEOは、始めてしばらくの間、ほとんど手応えがありません。書いた記事が検索結果に並ぶまでにも時間がかかりますし、並んだところで最初は誰にも見られない位置にいます。この期間に「効果がないからやめよう」と判断してしまうと、それまでに書いた記事は本当に何も生まないまま終わります。ここがSEOの一番いやらしいところで、そして一番おいしいところでもあります。多くの会社がこの期間に降りるからこそ、降りずに残った会社の記事が効いてくるからです。
だから、始める前に「最初の数ヶ月は見えない」と全員で織り込んでおくことが大事です。社長も含めて織り込んでおく。ここが共有されていないと、三ヶ月目に「あれ、まだ問い合わせ来ないの?」という一言が出て、現場の手が止まります。実際、やめる理由の1位が「手が足りなくなった」であることを考えれば、続けるかどうかは現場の頑張りではなく、経営側が期間をどう見ているかで決まっているとも言えます。
僕自身、デジマタクトの発信をほぼ毎日1本のペースで続けていて、この記事で41本目になります。最初の頃はもちろん誰も読んでいませんでした。それでも書き続けているのは、僕がかつて「作り込んでから出す」で盛大に失敗しているからです。粗くても出して、反応を見て、次を書く。この順番でしか前に進めないことを、お金を払って学びました。
数ヶ月先を想像してみてください。広告費をかけなくても、毎月一定の人が検索から会社のホームページに辿り着いている状態。そこに至る道のりは地味です。派手な打ち手は何もありません。ただ、止めなかった会社だけがその場所にいます。
まとめ
SEOで最後に効いてくるのは、記事のうまさでも本数でもなく、止めなかったという事実です。
僕は15年前、誰にも意見を聞かないまま数百万円を投じて教材を作り込み、1個も売れずに会社を畳みました。あのとき足りなかったのは準備ではなく、世に出して反応を見た回数でした。SEOも同じで、立派に始めることより、来月も再来月も続いている状態を作ることの方がずっと重要です。
だから、一番忙しい月でも回るペースを決めて、自分たちが一番詳しく語れるテーマから、必要な要素だけ揃えて出す。地味ですが、これが一番確実です。そして最初の数ヶ月は成果が見えないことを、現場だけでなく経営側も一緒に織り込んでおいてください。
もし今、更新が止まってしまっているなら、それは失敗ではありません。ペースが身の丈に合っていなかっただけです。組み直せば、また動き出せます。
よくある質問
Q. 記事は月に何本くらい書けばいいですか? A. 理想の本数より、一番忙しい月でも回る本数を選んでください。本数の多さより、来月も続いていることの方が結果に効きます。
Q. 完成度の低い記事を出すと、逆効果になりませんか? A. 内容が薄いまま量産するのは逆効果ですが、自社の経験が入っていれば十分価値があります。公開後に手を入れて育てていく方が現実的です。
Q. どれくらいで成果が見え始めますか? A. 一般的に半年から1年程度は見ておく必要があります。だからこそ、始める前に経営側とその前提を共有しておくことが重要です。
Q. 文字数は多い方がいいのでしょうか? A. 長さそのものより、読者の疑問に答えきれているかどうかです。薄い長文より、密度の高い短い記事の方が読まれます。
Q. 一度止まってしまったメディアは、もう手遅れですか? A. 手遅れではありません。過去の記事は残っています。まずは続けられるペースに組み直すところから再開してください。
発信が続かない、というご相談は本当によくいただきます。社内にある話を引き出すところから、AIを活用して効率化した記事執筆代行という形でお手伝いすることもできます。

人材派遣・住宅設備(マイセット)・空間プロデュース会社UDS・島原観光ビューロー・コラビットと、マーケ担当不在の現場を渡り歩いてきた実務家。26歳でホームページ制作で独立し15年以上Web制作に従事。教育施設の立ち上げでは半年で受講生100人達成、島原観光ビューローでは観光情報発信サイトのディレクションや集客コンテンツを手がけ13年続いた観光コンテンツ(累計経済効果2億円超)を立ち上げ、コラビットには一人目マーケターとして入社し広告CPA65%削減・記事200本以上作成、その後マーケティングマネージャーとして年間数億円規模の予算を管理。現在は屋号デジマタクトでホームページ制作を入口に、AIを活用したマーケティングの仕組みごと提供し、中小企業の担当者1名でも運用できる体制づくりを支援。


