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ユーザーインタビューで「欲しいですか?」と聞いてはいけない理由。個人事業主が陥る"優しい嘘"の罠

公開日: 2026-07-27更新日: 2026-07-27
ユーザーインタビューで「欲しいですか?」と聞いてはいけない理由。個人事業主が陥る"優しい嘘"の罠

新しいサービスや商品のアイデアを、誰かにぶつけてみたことはありませんか。もしあなたが「これ、どう思いますか? 使ってみたいですか?」と聞いて回っているなら、その質問自体が失敗の入口になっているかもしれません。僕は個人事業主として、そしてプロのマーケターとして、生身のお客さんの声をちゃんと聞いたつもりで、実は本当に聞くべきことを聞けていなかった怖さを何度も経験してきました。この記事では、その失敗から学んだ「聞いてはいけない質問」と「本当に聞くべきこと」について、できるだけ正直に書いてみます。

もし「これ、本当に売れるのかな」と一人で不安なまま突き進んでいるなら、その仮説を一緒に検証するところから始めませんか。

なぜユーザーインタビューで「欲しいですか?」と聞いてはいけないのか?

結論から言うと、「欲しいですか?」「使ってみたいですか?」という未来についての質問には、ほぼ意味がありません。人は悪気なく、優しい嘘をついてしまう生き物だからです。

僕自身、マーケターとしての駆け出しの頃に、この罠に思いきりハマったことがあります。友人のパーソナルトレーニングジム経営者と組んで、オリジナルのフィットネスプログラムを作って提供するサービスを立ち上げようとしたときのことです。需要を確かめようと思って、3人にインタビューをしました。

返ってきた言葉は「いいですね」「これ絶対売れますよ」「使いたい人いますよ絶対!」でした。良い感触だったので「よし、いけるぞ」と手応えを感じ、そのままリリースに踏み切りました。結果は、大爆死でした。

今振り返ると、答えてくれた3人の誰からも「俺が欲しい」「いくらですか?」「これ、〇〇さんに紹介しようかな」という言葉は、一度も出てきていませんでした。もらっていたのは、あくまで感想であって、購買の意思表示ではなかったんです。当時の僕は、その違いに気づけませんでした。

なぜ人は悪気なく「優しい嘘」をついてしまうのか?

人が未来の行動について聞かれると、無意識にポジティブな答えを返してしまうからです。これは相手が不誠実だからではなく、人間の心理としてごく自然な反応です。

ユーザーリサーチの現場でも、同じ指摘がされています。ユーザー自身も本当に欲しいのかどうかを正確に把握できておらず、体験したことのないアイデアに対しては、実際に判断がつかないまま反応してしまうことがあるとされています(出典:ユーザー調査の「使いたいと思います」を信じてはいけない、3つの理由 | Goodpatch Blog)。さらに、インタビューの場では相手は何のリスクも負わない立場なので、他人事の目線で「いいと思いますよ」と気軽に答えてしまいやすい、という点も指摘されています。

僕のフィットネスプログラムの件も、まさにこれでした。相手は自分のお金を払う場面を想像していたわけではなく、「良さそうなアイデアですね」という感想を、善意で伝えてくれていただけだったんです。それを僕が「売れる」というサインだと勝手に解釈してしまいました。

だからこそ、インタビューで聞くべきは未来の意思ではなく、過去に実際に起きた事実と、その時どう感じたかという感情です。過去の行動は本人にとっても嘘をつきようがない、正直な事実だからです。

ユーザーインタビューでは本当は何を確認すればいいのか?

確認すべきことは大きく分けて2つあります。1つは、そのペイン(悩み)が本当にお金を払ってでも解決したいほど強いものかどうか。もう1つは、なぜ今まで他の解決策を選ばずに、その悩みを抱えたままでいるのか、という未充足ニーズの手がかりです。

フィットネスプログラムの件で言えば、僕が本当に聞くべきだったのは「今のトレーニング方法に、具体的にどんな不便を感じていますか」「それを解決しようとして、何か他の方法を試しましたか」という、相手の過去の行動と感情でした。「良いアイデアですね」という感想の一歩手前にある、具体的な事実にこそ、仮説を検証する材料が隠れています。

このあたりの具体的な質問の設計の仕方や、実際のインタビューの進め方については、内容が濃くなりすぎるのでこの記事では踏み込みません。また別の機会に解説しようと思います。

質問設計の細部まで一人で詰め切るのは大変な作業です。具体的なインタビュー設計に困ったら、一緒に一問ずつ整理していきましょう。

「なぜ他の選択肢を選ばなかったのか」を聞くと何が見えてくるのか?

インタビュー相手が今まで、その悩みに対して他の解決策を選んでこなかった理由の中に、そのままメッセージの核になる言葉が眠っています。

たとえば、その人が「大企業向けの話だと思っていた」と感じていたなら、「個人事業主のための設計です」という打ち出し方が刺さります。「高くて手が出せなかった」と感じていたなら、「無理のない価格から始められます」という伝え方が効きます。つまり、なぜ他を選ばなかったのかを聞くことは、単なる需要確認ではなく、次に作るメッセージの方向性を決めるための、いちばん近道な質問なんです。

僕のフィットネスプログラムの失敗を振り返ると、ここも完全に抜け落ちていました。3人が「いいですね」と言ってくれた裏側で、「じゃあ今まで、他のジムのプログラムやアプリを試さなかったのはなぜですか」という一歩踏み込んだ質問を、一度もしていなかったんです。もしあの時、その理由まで聞けていたら、リリースする前に「本当に刺さる訴求」が見えていたかもしれません。

未来を聞く質問(NG) 過去の事実・感情を聞く質問(推奨)
質問例 「使ってみたいですか?」 「今のやり方で、具体的に困ったことはありましたか?」
相手の答え方 リスクゼロなので、気軽にポジティブな感想を返しやすい 実際に起きた出来事なので、嘘をつきようがない
得られる情報 「良いアイデアですね」という感想 ペインの強度、他の解決策を選ばなかった理由
リリース後のリスク 感想を購買の意思だと誤解し、大爆死しやすい メッセージの核を事前に掴めているので精度が上がる

まとめ

「欲しいですか?」と聞いて「いいですね」と返ってきたとき、それを購買のサインだと思い込んでしまう気持ちは、僕自身がよく知っています。フィットネスプログラムで大爆死した時、悪いのは答えてくれた3人ではなく、その優しい言葉を都合よく受け取ってしまった自分自身でした。

ユーザーインタビューで本当に見るべきは、未来への期待ではなく、過去に起きた事実と感情です。そして、なぜ他の解決策を選ばなかったのかまで一歩踏み込めたとき、初めてそのインタビューは仮説検証を超えて、次に打つメッセージの土台になります。もし今、何かのアイデアを誰かにぶつけようとしているなら、その質問がリスクゼロの感想を引き出すだけの質問になっていないか、一度立ち止まって見直してみてください。

よくある質問

Q. 「使ってみたいです」と言われたら、まったく信じてはいけないのでしょうか? A. 感想として受け止めるのは問題ありませんが、それだけで購買の意思があると判断するのは危険です。過去の行動や具体的な金額の話まで確認することをおすすめします。

Q. 過去の話を聞くだけで、本当に未来のニーズが分かるのでしょうか? A. 完全に予測できるわけではありませんが、過去の行動は嘘をつきようがない事実なので、感想よりずっと精度の高い手がかりになります。

Q. インタビューで良い反応しかもらえなかった場合、どう捉えればいいですか? A. 良い反応そのものより、「他の解決策を選ばなかった理由」を聞けたかどうかを振り返ってみてください。そこが抜けていると、感想だけで安心してしまう危険があります。

Q. 個人事業主でもユーザーインタビューはやるべきですか? A. むしろ個人事業主こそ重要だと思います。広告費もツール代も自分のお財布から出るお金なので、仮説のまま突っ走るリスクが会社員時代よりずっと大きいからです。

優しい嘘に振り回されず、本当のニーズを見極める方法を、一人で抱え込まずに一緒に考えていければと思います。

寺尾講平
寺尾講平

人材派遣・住宅設備(マイセット)・空間プロデュース会社UDS・島原観光ビューロー・コラビットと、マーケ担当不在の現場を渡り歩いてきた実務家。26歳でホームページ制作で独立し15年以上Web制作に従事。教育施設の立ち上げでは半年で受講生100人達成、島原観光ビューローでは観光情報発信サイトのディレクションや集客コンテンツを手がけ13年続いた観光コンテンツ(累計経済効果2億円超)を立ち上げ、コラビットには一人目マーケターとして入社し広告CPA65%削減・記事200本以上作成、その後マーケティングマネージャーとして年間数億円規模の予算を管理。現在は屋号デジマタクトでホームページ制作を入口に、AIを活用したマーケティングの仕組みごと提供し、中小企業の担当者1名でも運用できる体制づくりを支援。

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