広告のクリックやSNSのいいねが増えても、それだけで喜ぶのは危険です。それは「どれだけ動いたか」を示す数字で、「売上に近づいたか」を示す数字ではないからです。施策を始める前に、「この数字が上がれば前進」という追う数字を1つ決めておくだけで、判断の迷いはほとんどなくなります。
この「先に決めておく追う数字」は、専門用語ではKPI(重要業績評価指標)と呼ばれます。難しく聞こえますが、やっていることは「この数字が上がっていれば前進、下がっていれば見直し」という基準を、始める前に決めておくだけです。マーケ担当のいない会社ほど、これがないと、社長の感覚だけで施策の良し悪しを判断することになり、気づかないうちに遠回りをしてしまいます。
※広告やSNSの数字をどう見ればいいか迷っているなら、お気軽にご相談ください。
「追う数字」を決めていない会社は、どのくらいあるのか?
決して少なくありません。決めていないほうが、むしろ普通のスタート地点です。
株式会社ラクスとSansan株式会社が、従業員300名以下のBtoB中小企業の営業管理職300名に行った調査では、新しいお客さんを開拓する仕事について「明確に設定された指標(KPI)はない」と答えた人が、全体で39.0%にのぼりました(出典:PR TIMES(株式会社ラクス調べ))。同じ調査では、新しいお客さんを開拓する手法として「既存顧客や知人からの紹介」を挙げた人が60.7%で、ほかの手法を大きく引き離していました。
紹介中心で仕事が回っている会社ほど、数字で振り返る習慣がつきにくいのだと思います。だからこそ、追う数字を1つ決めるだけで、多くの会社より一歩前に進めます。
なぜ追う数字は「先に」決めておく必要があるのか?
始めてから決めると、良さそうに見える数字だけを見て「うまくいっている」と思い込んでしまうからです。
たとえば広告を出して、クリックが大きく増えたとします。「なんだかうまくいっている気がする」と感じるかもしれません。でも、実は問い合わせが1件も増えていなかったらどうでしょう。この広告は成功なのか、失敗なのか。先にどの数字を追うかを決めていないと、この判断自体がぶれてしまいます。
僕自身、前職で似た場面に直面しました。当時は不動産の無料AI査定サービスの担当で、最初は「無料査定の登録数」を追う数字にして広告を運用していました。登録数は伸びていて、数字だけ見れば順調でした。ですが、事業として本当に売上につながるのは、その先の「一括査定の依頼」だったんです。登録数が増えても、一括査定まで進む人が増えなければ、売上には届きません。
このとき、「どの数字を本当のゴールとして追うべきか」を、チームと経営陣を交えて議論しました。売上に直結する数字を優先すべきだという結論になり、追う数字を「登録数」から「一括査定の依頼数」に変えました。誰か1人の判断ではなく、「数を取るか、売上を取るか」というよくある悩みに、チームで向き合った結果です。この経験から、「見た目のいい数字」と「事業を前に進める数字」は、必ずしも一致しないことを身をもって学びました。
見た目のいい数字と、売上につながる数字は、どう見分ければいいのか?
「その数字は、動いた量を示しているだけか。それとも、売上に直接つながっているか」を自分に問いかけることです。
| 数字の種類 | 例 | 役割 |
|---|---|---|
| 動いた量を示す数字 | 広告のクリック数、SNSのいいね、表示回数、フォロワー数 | 活動を積み重ねた証。無駄ではないが、売上とイコールではない |
| 売上につながる数字 | 問い合わせの数、成約の数、1件の問い合わせにかかった費用 | 事業が前進したか、後退したかを直接判断できる |
いいねや表示回数は、決して無駄なものではありません。これまで積み上げてきた大切な活動の証です。ただ、経営の判断に使うなら、主役にすべきなのは下の「売上につながる数字」です。
施策によって、追う数字の中身は少しずつ変わります。
- 広告: 1件の問い合わせ(または購入)にかかった費用
- SNS: フォロワー数より、プロフィールやホームページへのリンクがどれだけ見られたか
- ブログ(検索からの集客): 記事から来た人の数と、そこから問い合わせた人の割合をセットで
ホームページで問い合わせの数を正しく数えられないと、追う数字を決めても確かめられません。追う数字の設計と、それを数える設定をまとめて整えることもできます。
追う数字が決まると、判断はどう変わるのか?
迷いという感情ではなく、数字という事実で、次の一手を選べるようになります。
たとえば、「問い合わせを月10件にする」と決めていたとします。今月はクリックが多かったのに、問い合わせは3件だった。この場合、「クリックしてきた人の質か、着地したページに改善が必要だ」と、次に打つべき手が数字から自然に浮かび上がってきます。
追う数字は、一度決めたら変えてはいけないものではありません。僕が登録数から一括査定の依頼数に変えたように、事業の状況に合わせて何度でも見直していいものです。大事なのは、見直すときも「この数字は売上につながっているか」という同じ問いで判断することです。
まとめ
クリックやいいねが増えても、それは「どれだけ動いたか」を示す数字で、売上に近づいたかどうかは分かりません。施策を始める前に「この数字が上がれば前進」という追う数字を1つ決めておく。それだけで、判断のぶれはほとんどなくなります。僕自身、見た目のいい登録数を追っていた時期があり、売上につながる数字に変えたことで、ようやく正しい判断ができるようになりました。まずは今やっている施策ごとに、「この数字は売上につながっているか」を問いかけてみてください。
よくある質問
Q. KPIとKGIの違いは何ですか? A. KGIは売上や成約数などの最終的な目標、KPIはその達成に向けて途中で確かめる数字です。KGIがゴール、KPIが道中の確認ポイントと考えると分かりやすいです。
Q. 追う数字は、いくつ決めればいいですか? A. 決まった正解はありませんが、最初は売上につながる数字を1〜2個に絞ると、判断がしやすくなります。
Q. SNSのフォロワー数は、追う数字にしないほうがいいですか? A. 否定する必要はありませんが、それだけを追うと売上とのずれに気づきにくくなります。問い合わせの数とあわせて見てください。
Q. 追う数字は、途中で変えてもいいですか? A. 変えて構いません。事業の状況に合わせて、「売上につながっているか」という同じ問いで見直してください。
一人で数字を抱え込まず、一緒に考えさせてください。

人材派遣・住宅設備(マイセット)・空間プロデュース会社UDS・島原観光ビューロー・コラビットと、マーケ担当不在の現場を渡り歩いてきた実務家。26歳でホームページ制作で独立し15年以上Web制作に従事。教育施設の立ち上げでは半年で受講生100人達成、島原観光ビューローでは観光情報発信サイトのディレクションや集客コンテンツを手がけ13年続いた観光コンテンツ(累計経済効果2億円超)を立ち上げ、コラビットには一人目マーケターとして入社し広告CPA65%削減・記事200本以上作成、その後マーケティングマネージャーとして年間数億円規模の予算を管理。現在は屋号デジマタクトでホームページ制作を入口に、AIを活用したマーケティングの仕組みごと提供し、中小企業の担当者1名でも運用できる体制づくりを支援。


